心
心があると思っていた頃は、心を必死に守っていた。
泣かないように。
泣き過ぎると疲れるから。
傷つかないように。
傷つくと、痛いから。
今は、心があるとは到底思えない。
あるのは、あふれる水とか、あふれる空気とか、
そういうもの。
それはあふれる時にあふれるだけ。
悲しみとか、痛みとか、そういうものは一緒に訪れる。
でもそれは何か、体に付随した信号みたいなものに感じられ、
それが起きることに対して防御しようとか、
自分で自分を必死にコントロールするような事が起こらない。
そうなってみた結果気づくのは、
悲しみは悲しいから起きるのであって、
痛みは痛いから起きるのであり。
それが起きるままに起こさせている事ができるとしたら、
それは本当に素晴らしい事なのではないかと私は思う。
心を失ってみて、心を得た気がしてしまうのだ。
2019/10/29 久保 真礼