私は都内で治療所を開業しており、
入門の動機は岩城さんが身体のケアの為に来院していた事によります。
岩城さんは色々な格闘技、武術を二十年に亘りやられている専門家でした。
私の治療所は外部からの出入りが多く、物騒な今の御時世です。
何か危険な事が起きたら自分の身を守る為にどうしたらいいか常々考えていましたが、
どのような方々に聞いても納得のいく答えはなく、とある武術家の方は「逃げるのが一番良い」
と言われましたが此処には逃げ場など無く、誰の言う事も今一つ私には腑に落ちませんでした。
しかし、私にも暴力を制する様な本物の武道が出来るものか、私はその時六十三歳でした。
私は岩城さんに相談しました。
「武道の稽古は進むに連れて、肉体的にも精神的にも段々楽なものとなっていきます」という、
言葉に感じるところがあり、後日、引き寄せられる様に稽古を見学させてもらいに行きました。
その日の稽古には二十代から三十代位の方々が指導を受けていました。
印象は私が思っていた、想像していたものとは違い、大変緊張感があり、
岩城さんの武道というものを初めて見せてもらい、武道とは一体何なんだろう?と思いました。
この時の神秘的で緊張感と凄みに満ちた印象に、(私に出来るだろうか)と不安も感じました。
しかし心の中ではメラメラと気力が芽生えるのを感じ、何の躊躇も無く入門しました。
稽古当日、若い格闘技出身の人達が三人ほどで稽古していましたが、
岩城さんに子供の様にあしらわれていて、緊張感があり、この頃は非公開の稽古で凄まじく、
皆出来る事は何でも試すといった感じで手加減など微塵も無く、ふと不安にもなりましたが、
決めた以上やれる所までやってみようと腹を括りました。
岩城さんは実際の稽古では無理をさせず、かといって甘くはなく、
私は身体の中に今までにない充実感を感じました。
今この文章を書いていて一年前の事を思い出すと笑いが止まらず、二年がアッという間です。
まず変わった事は一つや二つではなく、とても全ては書き表せません。
仕事でも今迄と違い、疲れが非常に少なく、疲れが少ないと患者さんに対する気力が充実し、
治療効果に歴然とした違いを感じる様になりました。
色々な事がありますが、自分の人生がキラキラ輝いている様な気がします。
稽古中の岩城さんの話は大変面白く、この“生雲”はまさに“岩城流”と言えるもので、
二十年に亘る研究と実践、そして天啓によって作り上げられたものだと、つくづく感じます。
この人はこの武道を直接的には誰にも教わっておらず、いつも突然の進境を見せます。
全ての悪い状況に対して対処出来る、最悪の場面をも織り込んだ究極とも思えるもので、
六十四歳の私が若い人達と立ち合っても、一目置かれる事もあるのです。
武道には歳は関係ないもの、言い訳にならないものと実感しています。
金縛りの様になって動けず、汗が滝の様にだらだらと流れて眩暈がし、
相手の身体から白い輪が出ていたり、正眼に構えている相手の身体が剣の中に消え、
何度目を凝らしても身体が消えてしまい、相手の切先は自分の目の前に見えたりします。
こちらの攻撃は全く遠くて届かなかったり、とんでもない方へ逸れたりします。
でも相手は目の前に来てるのです。
こんな事は時代劇の中でしか起きないと思っていましたが、
“生雲”においてこれはまだ初歩といってよく、ある過程でしかありません。
「無敵の状態と最弱の状態は見た目には同じ」という無の先の稽古を体験すると、
意識的にせよ無意識にせよ、こんな事が出来たら強いも弱いも意味が無いと感じます。
単純に見えてもとにかく奥が深いのです。
岩城さんは解り易く、解り易く、心から指導してくれています。感謝しています。
ともかく指導が素晴らしいです。
木刀で相手の木刀を断ち切り、よそ見をして説明しながら全力の突きに対して感応し、
何でも実践して見せます。
この人は神憑っており、十年以上の付き合いですが私からすると非常に神秘的な存在です。
武道の稽古を始めて2年と数ヶ月が過ぎた先日、私は街中で突然の実戦体験をしました。
自転車連れの三人の若者に因縁をつけられ絡まれたのです。
180センチ以上はある体格のいいその中の一人が「おい何だこの野郎」などと殺気立ち、
自転車を降りようとするかしないかの瞬間、私は相手の目の前に入っていたのです。
無の先の稽古でいう無拍子の状態で、何でそうしたのか分かりません。
しかし拍子を抜かれた様に相手は身動きが取れず、残りの二人も全く動けないでいました。
私は全くと言っていいほど恐怖を感じず、とても自由な心持でした。
やろうと思えばどうにでも出来る状態の中に自分がいて、相手の若者は、
「何かやってるんですか」などと言い出し、見る見るTシャツが汗でビッショリになり、
硬直状態になっているのが分かりました。
結果、すっかり意気を削がれた様子の相手と幾つかの言葉を交わし、何事も無く済みました。
自分も相手も怪我をしたり傷付いたりする事無く、遺恨を残す事も無く、私自身恐怖も無く、
無意識の内に身を護る事ができた事は私が求めていた事であり、とても感慨深く思っています。
少し前に田村君が殺傷沙汰を事前に阻止しましたが、
その時はカっとなった人が刃物を掴もうとした所を掴む前に制し、やはり誰も怪我する事無く、
又、その現場で普段どおりの心理状態で行動できたのは田村君だけでした。
今にして思うと生雲の武道、岩城さんは色々な意味で本当に凄い事をやっています。
私は職業上様々なジャンルの一流を見てきましたが、そのどれとも違う。
強い弱いの次元ではなく、日本古来の本物の武道が確かに此処にあるように思います。
それを疑いようもなく顕わにし、しきたりや作法、型、形式ではなく、技術ですらない、
おそらく最も深い日本文化の本質を岩城さんは実践しています。
岩城さんの指導に従うことで、私自身ここにきて俄かに人に話せない様な体験を経験し、
確信に至り、それによって今まで困難だった治療が可能になるなど、疑う余地がないのです。
この、理論や理屈で理解する次元とは明らかに異なる境地を正に徹底しているのが生雲です。
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